このページでは、個人投資家の秋山昇氏によって開発され、相場技研で売買サインを提供する 秋山レシオについて説明します。 なお、以下の解説はライセンス契約を結ぶ際に秋山氏から提供されたものであり、 相場技研としましては、学術的な内容の詳細について問い合わせをいただいてもお答えいたしかねますので、ご了承下さい。
相場の値動きは、様々な周期の波動の集まりであると考えることができます。 周期の長い波動は長期的な変動に対応し、周期の短い波動は短期的な変動に対応します。 秋山レシオは、相場の値動きの中からある一定範囲の周期を持つ波動だけを取り出して指標化したものであり、 周期の長い波動を取り出したレシオは長期投資に、周期の短い波動を取り出したレシオは短期投資に用いられます。 秋山レシオは概ね−100%〜+100%の範囲を上下しますが、ときには100%以上になったり−100%以下になったりすることもあります。 レシオが±100%に近付いたときには天底となることが多いので、逆張りにも使えますが、 ダマシも多いですので、レシオが上昇しているときには買い、下落しているときには売る、という順張り的な使い方が基本となります。
相場の値動きは、様々な周期の波動の集まりであると考えることができますが、 秋山レシオは、その中から特定の範囲の波動を取り出し、正規化したものとなります。 通常、信号処理の分野では、特定の範囲の波動を取り出すためにフーリエ変換やウェーブレット変換などが用いられますが、 いくつかの理由により、相場の値動きに対してはそれらの手法を用いることができません。 相場の値動きを対象にする場合には、詳しくは説明しませんが、 確率解析を元にして時間軸上の半開区間に適切なヒルベルト空間を構築することによって波動の分析が可能になります。
実際の秋山レシオの例を以下に示します。 2008年〜2012年の5年間について、東京ガソリン、ドル円為替相場、日経平均株価について、 短期(N=50)、中期(N=100)、長期(N=200)の秋山レシオを計算したものです。 ここで、Nというのは移動平均で言えば平均する日数にあたるもので、秋山レシオにおける唯一のパラメータです。 また、長期や短期というのはもちろん相対的なもので、このグラフの短期秋山レシオも、 もっと周期の短い秋山レシオから見れば長期ということになります。
東京ガソリンのグラフを見ると、2008年7月〜12月にかけての大暴落や2010年8月以降のゆったりした上昇と下降が、 長期秋山レシオによって綺麗に捉えていることがわかります。 一方、2012年4月〜7月の暴落など、中期秋山レシオがよく捉えている部分もあります。 2009年4月〜2010年10月あたりの期間においては、比較的細かい上下動が中心となり、 短期秋山レシオがよく動きを表しています。
ドル円為替相場については、一貫して長期秋山レシオがよく相場を捉えていることがわかります。 2008年8月〜2009年1月の下落や、2009年11月〜2010年4月などの小さな上下動など、 中期や短期の秋山レシオが上手く捉えている部分もあります。
日経平均については、概ね、中期秋山レシオがよくフィットするようです。
以上のように、秋山レシオのなかでも周期によってよく機能するものとあまり機能しないものがあり、 また、同じ相場でも時期によって、よく機能する波動の周期が変化することもあります。従って、 実際に秋山レシオを分析に用いる際には、どの周期の秋山レシオを用いるかの判断が必要になります。 詳しくは具体的な使い方で説明します。
秋山レシオは機械的な売買システムに利用することも可能です。 下の図は、2003年から2012年までの10年間の東京ガソリンについて、 秋山レシオが前日より上なら買い(もしくは買い維持)、前日より下なら売り(もしくは売り維持)という売買規則で損益を計算したものです (右軸が損益額)。売買数量は倍率50倍換算で1枚、手数料は往復1000円で計算しています。 パラメータNによって異なりますが、10年間で1枚あたり300万円〜700万円程度の利益になっていることがわかります。
この結果だけを見ると、ドローダウンもそこそこありますし、利益の出ない期間も長いですので、 システムとしてはあまり良いようには見えません。 しかし、これはあくまで秋山レシオの有効性を示すために計算した結果であり、 実際にシステム売買に利用する際には、休みの期間を設ける、ダマシを回避する、仕掛ける量に強弱をつける、他の指標と合わせる、 パラメータを自動で最適化する、などのチューニングが必要になってきます。
一般的に売買システムは、チューニングすればするほど損益曲線が右肩上がりの綺麗な直線を描くようになっていきます。 しかし、同時にカーブフィッティングもされてしまいますので、チューニングされたシステムがどの程度、 未来に向けて通用するかは判断が難しいといえます。 それに対して上の結果は、一切何もチューニングせず、秋山レシオが上昇中なら買い、下落中なら売るという、 これ以上単純化できない売買ルールで計算したものであり、 しかも秋山レシオの唯一のパラメータであるNを様々に取って計算した結果ですので、カーブフィッティングの余地はありません。 そのような状況での結果ですので、 やはりこれは秋山レシオが相場に対して有効な指標であるということを示唆しているものと考えられます。